2005年03月04日

[底]ハンニバル戦記

 塩野七生の『ローマ人物語』文庫版の3〜5巻です。


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 この3巻は、カルタゴ人の天才戦略家ハンニバルによるローマ侵略戦争「ポエニ戦役」の顛末が描かれています。BC264〜241年の第一次、BC218〜201年の第二次、そしてBC149〜146年の第三次と、延べ43年に渡ってローマとカルタゴは戦い、そして第二次ポエニ戦役で一旦ローマ側の勝利で終わった戦争は、カルタゴにとっては不運が重なって第三次ポエニ戦役を勃発させ、ついにカルタゴは首都を滅ぼされてしまうまでに至ります。
 そして、この戦争でローマ最大の敵となったのが、カルタゴ軍の司令官であり、スペイン総督であったハンニバルでした。

 ハンニバルの取った戦略は騎兵を主体とした機動力を生かしたもので、現在の頭からすると特に新味はないんですが、当時は騎兵自体が少なく歩兵隊が戦争の主役であったために斬新であったようです。それに今でも「新味がない」だけで「前時代的」とは必ずしも捉えられないだけでもすごいです。
 マケドニアのアレクサンダー大王が率いていた重装歩兵はギリシアを制覇するだけの実力を誇っていましたが、前方からの突進には強かったものの横や後ろを取られると弱いという今から考えれば非常にわかりやすい弱点があったらしいです。それを考えれば、機動力と情報を重く見たハンニバルはやはり頭がよかったんでしょう。

 日本人の特徴の1つに判官贔屓というのがあります。負けそうな方を応援したくなる気質、といえばいいでしょうか。ハンニバルは当初、既に大国であったローマに対してスペインからアルプスを越えて引きつれてきた2万弱の兵士で攻撃を仕掛け、自らの戦略と周辺の浮動勢力の取り込みとで数万の軍団を敵地で編成し、ことに前半はほとんど連戦連勝の勢いで北からイタリアを縦断して南イタリアに自分の実質上の領土を獲得します。その経緯は見ていて痛快ですらあります。
 で、そうなると負けっ放しのローマも兵力を増やし、様々な司令官を投入して対抗していきます。そしてそれが段々と功を奏してきて、ハンニバルの領土は少しずつ削られ、ついにはイタリア半島のつま先の方まで追いつめられていきます。この辺りになると、今度はこれまでとは逆にローマ側から見て、「最強の敵」に対して次第に攻勢に出て行くのに喝采を送りたくなってきます。
 そして、ハンニバルもローマも、見た目の戦況とは別に、それぞれに足枷となる事情があり、そこまで語ってくれるので、戦況の推移がわかりやすく、かつドラマチックに読み取れます。

 ハンニバルも、そして彼の戦略を自分のものとしてハンニバルを正面から撃破したローマの執政官スキピオ・アフリカヌスも、最後には母国の政治の中枢から遠く離れた地で死を迎えます。それが哀れでもあり、また時代が変わってもなかなか変わることのない業なのかなぁとも思ったりします。
posted by alohz at 02:36| バンコク | Comment(0) | TrackBack(0) | book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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